ポンコツエンジニアの読書記録。

30代のポンコツプラントエンジニアです。読書記録をつけることで、知識の定着を目論んでいます。

#17 楽園(上下);サイコメトラーとズケズケライター

宮部みゆきの楽園です。この作家さんの作品は、「名もなき毒」以来の二作目です。

 自分の興味で手に入れた訳ではなかったので、ずっと本棚に仕舞っていましたが、文芸も読んでみようという事で、手にしてみました。

 本作品は「模倣犯」の登場人物が登場する、スピンオフ的な続編的な立ち位置の作品のようです。なので、手を出しにくかったというのもあります。

話の流れとしては、サイコメトリー能力を持つ少年の母親からの息子のサイコメトリーは本当なのかという依頼を受けたことから始まります。

 この少年のサイコメトリーは過去の記憶を読み取って、絵に表すというもの。その絵はひどく幼稚であるが、記憶の重要なアイテムは忠実に描かれているようです。

 その少年が描いた、家の下に埋まる人を発端に、絡み合った人間関係と過去の犯罪をライターである、主人公の女性が暴いていきます。時々、模倣犯時代の思い出話や人物像が描写されていますが、模倣犯を読んでいない私としては、あまりピンときませんでした。(アマゾンレビューは読んでなくても大丈夫とのコメントが多数。確かに、物語の主幹には全く影響ないです。)

 

 映像で見ているかのように、脳裏に鮮明に描かれる文書力は脱帽です。ドラマを見ているみたいに、展開が気になり、次々にページを捲ってしまいます。

ただ、主人公のライターのお節介さやズケズケしさは、あんまり好きになれませんでした。これが、著者の描きたかった、ライター像なのかもしれません。ライターというのはこのくらいズケズケ行かないとしっかりした文書が書けないのかもしれませんね。

 

また、サイコメトリーである依頼者の息子に最後は着地するかと思いましたが、そこは伏せられていました。どんな人でも闇を抱えている。その闇に飲まれないように、シェルター的役割を果たす何かを人は持っています。人々の楽園を描いた良作でした。

楽しかったです。

楽園 上下巻 セット

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