#11 世界からバナナがなくなるまえに;科学者たちの奮闘
タイトルに惹かれて買ってしまいました。
世界からバナナがなくなるってなんだって感じでしたが、内容はシリアスです。普段私たちが気にしていない、ありふれた食材は実は科学者達の努力と偶然による産物でしかなく、一歩間違えば食糧危機に陥る状況にある事をこの本を読む事で触れる事ができます。
ここで、勉強になったのは、人類が現在消費しているカロリーの80%は12種類、90%は15種の植物から摂取しているという事。
いつも様々な食材を食べていると思っていましたが、実際には味付けや調理法を変えただけで、これだけの植物にしか頼っていませんでした。
この植物も、科学者たちが奮闘して耐性のある品種を作り出す。さらには、対害虫対策で別の昆虫を輸入するといった、膨大な試行錯誤と考察の結果、安定供給されています。
アイルランドのジャガイモ疫病の章では、主食のジャガイモが取れなくなった事で、人口が2/3まで減ってしまった事。飢饉で行き場を失った人たちは死にゆくか、逃げ出すかしかなかったようです。ここで、ふと思ったのは、先日読んだ、ヒルビリーエレジー。ここでは、アイルランドから移住してきた人々の生活が描かれていました。おそらくこの飢饉で体一つで抜け出した人たちが、アメリカでやっとの思いで生活して現在まで家系をつないできたのかと思うと、ヒルビリーの一端をさらに理解できたような気がします。
話は逸れましたが、
-ロシアの科学者が種子の保管に命をかけて、最後まで種子を食す事なく餓死した話。
-なんでカカオの産地は広がっていかないの?
-現在の種子バンクはどうなっているの?
-メキシコと日本の小麦品種改良の成果は?
など、面白い話満載でした。
農学部や食料関係者などの専門分野の方だけでなく、技術者としての人々の生活のためにどう向き合うかといった、エンジニア思考をしっかり考えさせてくれる本でした。
世界からバナナがなくなるまえに: 食糧危機に立ち向かう科学者たち
- 作者: ロブ・ダン,高橋洋
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2017/07/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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