ポンコツエンジニアの読書記録。

30代のポンコツプラントエンジニアです。読書記録をつけることで、知識の定着を目論んでいます。

#20 英国一家 日本を食べる(上下);和食を海外から眺めると。

美味しいものが大好きなので、ついつい手に取ってしまいました。

文調が軽いので、内容の薄い食紀行かと思ってましたが、よく観察して素直に感じたこと、学んだことを書いているので、こちらも勉強になります。

 

話は著者マイケルさんが、妻のリスン、息子のアスガーとエミルを連れて2ヶ月間、日本の各地を周り美味しいものを食べることが目的です。

彼らが食べたものは天ぷら、ラーメン、寿司、カニ、ちゃんこ、そうめん、牛肉、フグ、くじらと多分にあり、訪れたところも、北海道から九州・沖縄まで縦断しています。 

彼らが訪れた、天ぷらみかわ是山居、京都吉兆、など一流店ばかり。

この感想だけでも面白かったですが、さわび農家でのわさびフルコースなど、普段耳にすることのない場所での食事も掲載されています。 

和牛の美味しさを確かめるために、和牛にビールをあげに行ったり、本物のわさびを食べに農家を訪れたりと、こちらも知らない情報満載でした。 

 

でも、最後のエピローグにちょっと切なく考えさせられる内容が。

日本の伝統的な料理が急激な変化にさらされ、末期的状況におちいりつつあることも僕には発見だった。だしを取るための、鰹節、昆布、海苔、豆腐、そば、酒の消費量は、もう回復不可能なほど降下線をたどっている。世界では、長年人気を集めてきた鮨だけでなく、さらに幅広く「和食」を認知する動きが始まっているというのに。-その結果、和食はユネスコの世界無形文化遺産に登録された。-あまりにも皮肉だ。(下巻p221)

 

伊勢神宮に行く前の週、僕らは味噌、海苔、鰹節、豆腐の生産者と会って話を聞き、名古屋の歴史ある懐石料理の店、「河文」を始めとする、伝統ある料理屋で食事をした。僕が話をした食の専門家や料理人はみんな-そのうちの何人かは、何世紀も前から営まれている会社や料理人の人だ-異口同音に、現代の日本人が彼らの作るものに興味を失っている、和食全般に関する興味や消費が降下している、と寂しい話をしていた。(下巻p223)

顆粒だしが開発され、輸入物に押され、景気が悪いことも後押しして、品質の良い高価な自然食品には手が出なくなっている日本人と伝統(=高品質高価)な生産者との乖離を感じてしまいます。海外にいると、顆粒だしでも質の悪い醤油でもホントに美味しく感じますが、日本にいると品質差を吟味するほどの興味、関心が薄れているようです。

本当に美味しいもの。本物の料理を味わった人はもう戻れないもしくは戻ろうとすると思いますが、今の消費大衆層には難しいかもしれません。

昔食べた、京都にある"祇園にしかわ"を始め本当に美味しい和食はいつも思い出すだけでヨダレがでます。日本人であることを忘れないためにも、国産の美味しい食材をしっかり取り入れようと思います。

 

英国一家、日本を食べる 上 (角川文庫)

英国一家、日本を食べる 上 (角川文庫)

 
英国一家、日本を食べる 下 (角川文庫)

英国一家、日本を食べる 下 (角川文庫)